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DIPROニュース

2021

2月号

2021.02.10

BOM再構築に立ちはだかるハードルを越えるために<施策編>

はじめに

ものづくりで利用される製品・製造・品質・アフターサービス・原価などの情報は、それらの情報を集約し制御する中核となるBOMによって流通・管理することにより企業内を横断してつながり、これを企画、設計、生技、生管など各部門で活用することで、経営課題の迅速な解決をも可能にします。

本稿では、前回お伝えした”BOMの再構築に関わる進め方”(DIPROニュース2019年4月号)からさらに具体的な施策や考え方をご紹介します。

BOM再構築ならびに再構築を図る上での実施の考え方について

昨今のBOMの再構築の理由としては、前回以下を整理しました。(表1)

1)老朽化に伴う再構築
2)グローバル化に伴う再構築
3)BOMを基軸(INDEX)とした技術情報管理の高度化に伴う再構築
4)図面文化からの脱却(デジタル化)に伴う再構築
5)企業間提携・合併に伴う再構築
6)法規・国際標準準拠に伴う再構築
7)設計部品表と生産部品表の接続性に伴う再構築
8)多品種少量生産、多様性への対応に伴う再構築

(表1)BOM再構築の理由(例)

いずれの理由においてもBOM再構築における立ち上げの基本的な考え方は「改革業務との一体開発」です。BOMだけ作っても効果は出ないので、立ち上げるシステムの単位でプロセス改革した業務と同期して、立上げ時の効果を示しながら順次定着させていくことが重要と考えます。システム先行で検討を進めても業務への効果が出ない可能性がある上に、場合によっては立ち上げても現場のお客様に使われない、ということに成りかねないためです。立ち上げの順番は特別な理由がない限り、最上流の商品企画から設計→生産→販売→サービスの流れに準じ、仕様定義、E-BOM、M-BOM、S-BOMの順で立ち上げるのが一般的です。

各フェーズにおいては、できる限り二重業務をさせないことを意識し、この効果を効率的に出すためには、立ち上げの順番は上流から実施することが肝要と考えます。

業務観点での重点施策ポイント

前述のように、BOMの再構築の理由は様々であり、かつ複合的に発生します。

ご存知の通り、BOMは企業の上流から下流まで一気通貫で利活用される情報基盤であり、最重要な情報システムの一つです。それ故、BOM再構築による関連部門への影響も大きいため企業間や部門間での越えるべきハードルが数多く発生し、その進め方が重要になってきます。

そのための対策として、業務的な重点施策のポイントを述べます。

1)目指す姿・目標は北極星

実はこれは創業当時からの弊社内の教えでもあるのですが、再構築業務では、なるべく高くて遠い目標を掲げ、直近の方向を決める時の羅針盤にします。

重要なのは理念に基づく適切なビジョンと目標設定です。そのビジョンと目標を前提に、どの道を選択すべきか、直近での選択をどうすべきかを優先度を持って検討し実施していくことが肝要です。

なるべく高くて遠い目標を掲げよう。そして直近の方向を決める時の羅針盤にしよう。どの道を選択すべきか?直近の選択肢は?
(図1)目指す姿・目標は北極星
※クリックすると拡大します

2)プロジェクト目標は定量的に

業務改革プロジェクトの狙いと、業務分析により裏付けられた定量的目標を設定します。

3)業務改革における効果刈り取りは業務側の責任

業務改革における効果刈取りを可視化するには、業務改革の実行責任者と各施策の達成責任者の責任と役割を明確にすることです。

4)早期着手だけではQCDは向上しない

モノづくりのフロントローディングは結果的に設計手戻りをなくすことであり、早期着手の意味とは違います。

5)フロントローディングをやれば設計者負荷は増える

設計検討段階へのフロントローディングは開発業務への負荷を伴うため、体制支援施策が必要です。
その理由は、構想や設計といった上流に多くの時間を取られることから、必然的に下流側に負荷がかかるためです。そのため、手配をはじめとする業務を自動化し、フロントローディングする仕組みができれば、上流のリードタイムも圧縮され、結果として下流の負荷も軽減されます。

標準、オプション、カスタマイズといった製品ラインアップがありながら、実際には都度受注生産が製造の大半を占めるような負荷が高い現場では、標準化、共有化が実現できる仕組みに見直すことで設計・生産の負荷を減らし、その工数を新たな製品開発や新技術の研究に振り向けることも可能です。

さらに、受注予測は困難で、短納期で見込み生産をする必要があるため、常に在庫が大量に存在する現場であれば、共用化率を上げる仕組みを組み込むことで、部品種類を削減し再利用できるような業務へ改善を図り、モジュール化に取り組む検討を進めることが可能です。

6)システム開発は業務とITの両輪

業務改革におけるシステム構築は、開発体制・施策レベル共に二人三脚がベストです。

7)BOMは活用されてこその仕組み

BOMはモノづくりの基幹システムですが、業務に活用した後の効果の世界です。

例えば、設計情報の束でもある製品を設計変更する場合、設計情報の更新を起点に、設計者の意図・意見をいかに効率的に生産に反映させるかが肝になるので、設計部門が作成した設計情報を、生産部門で効率的に正しく製品に転写させる、その精度と密度が大事になってきます。

また、設計情報の伝達は、生産部門だけでなく工場内の資材、調達、購買、品質管理といった各部門にも伝達され、各々のBOMに必要な形として格納されていき、企画、設計、生技、生管などの各部門で活用することで経営管理にも役立てることができます。

このように、情報を集約し制御する中核がBOMですので、業務に適用し活用される中で効果はあがってくるものです。(図2)

(図2)BOMの位置付け
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8)台当たり管理はデータ移行が肝

特に自動車ではモジュール化や部品共有化の比率が高く、台当たりで部品が揃って効果を生みます。

9)業務ルールは生存率100%維持

手戻りを起こさない業務運用には業務の基準・明文化が重要ですので、実運用と差異があるモノは使えません。

10)開発期間短縮は約束を厳守

約束した計画日程を守れる風土か否か、マネジメント力が大きなカギとなります。

システム観点での重点施策ポイント

BOMの情報は、業務を支える土台です。

BOM再構築を行う際には、E-BOMやM-BOMそれぞれを単独で見直して、直近での効果を出すのでなく、上流から下流に至るBOM情報を、全行程に至る業務を横通しでいかに切れ間なく繋げていけるのかを最も意識しなければなりません。

BOM情報が業務を支える土台として繋がっていれば、企画、設計、生産、アフターといった業務プロセスの用途に応じて、または商品仕様、製品仕様、ユニット仕様といった業務用途に応じて、必要な断面や情報を切り出して業務に活用していくだけです。

従事する業務毎の視点だけでみてしまうとBOM情報はそれぞれ個別であるように錯覚しがちですが、データが繋っているからこそ、業務のフロントローディングやリードタイムの短縮、設計・生産効率の向上、プロセス間の連携効率の見直しができるのです。

また、国際標準化、モジュール化の進展、組み込みソフト管理といった新たな要件も取り入れ、つながるものづくりの方策検討は大きな命題ですので、設計情報・CAD~工程設計~生産管理~サービス、原価といったデータをいかに効率的に管理し、アクセスが容易でタイムリーに取り出せるかが重要となります。

BOMが全技術情報を管理する重要な要(INDEX)となり、品目名や部品名、部番で検索し、簡単に情報を入手できる仕組みとなっていれば、より一層BOMの使い手が増え、企業全体の効率が上がります。

是非とも業務プロセス全体の観点から、最大効率最大効果を生み出す仕組みをご検討いただきたいと思います。

(図3)BOM情報が業務を支える土台
※クリックすると拡大します

ではここで、システム的な重点施策のポイントを述べます。

1)BOMにおけるデータ衝

データは、仕様や業務フローなどの羅針盤です。BOMの仕組の中でデジタルデータを衝(要:かなめ)として、ものづくりを進めることにより、市場のニーズに合った製品を正確に早くつくることができます。

実はこれも創業当時からの弊社内の教えでもあります。

「衝とは」・かなめ、要所、要衝、大切な地点・通路(データの通り道)・突き当り、照らす(標準、鑑)「要」としてのデータは大変重要であると同時に、それが外れるとたちまちバラバラになる
(図4)BOMにおけるデータ衝
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2)経営層と事業部門のBOM活用理解と、情報システム部門のビジネス理解

1つの目的に向けて課題解決のアプローチを”議論”できる共通言語と場の創出を図りましょう。

そのため、BOM再構築プロジェクトの“計画立案”では以下が不可欠なポイントと考えます。

  • トップ方針(Top Down)での推進(最重要)
    上述のとおり、BOM再構築は全部門に影響することから、限られた部署や局所課題のみを解決するだけではなく、全体最適を図ることが前提となります。問題を解決するには、経営トップがBOM再構築を推進するための専従組織の編成と実施推進の大号令をかけ、その組織の担当者に相応の権限を付与することが重要です。
  • プロジェクト目標の設定
    プロジェクト推進において、迷いや混乱が生じた場合にはプロジェクト目標に立ち返り、軌道修正を図る必要があります。例えば魅力ある製品によるシェアアップ、グローバル化を踏まえた拡大による収益増加、安全性と品質を確約したQCDの向上などの経営課題と、前述した「なぜBOM再構築を図るのか?」という目標を明確に連携させておく必要があります。
  • プロジェクト体制の構築
    各部門のステークホルダーの参画が必要です。(詳細は10)にて述べます)

3)「今何をすべきか」の正しい認識

システム導入を前提に検討しまいがちですが、考えるべきは「どうビジネスを進めるか、進め方を変えるか」です。

4)「再構築」に対する誤解の払拭

「全く新しい価値」を生み出すより、自社の強みやビジネスプロセスを見直して「既存の強みを先鋭化させる取り組み」を図りましょう。

5)より効率的な形に変える「デシタライゼーション」

効率化、コスト削減だけでなく、業務 / ビジネスの処理・遂行プロセスを見直し連携させ、部門横断でプロセス全体を自動化しましょう。

6)企業としてありたい姿で、新たなビジネス価値を生み出すプロセス重視

業務 / ビジネスをデジタルの力でさばく下地が整った上で、機能やデータを効率的に連携させる「仕組み」を継続的に改善していくことこそが、新たなビジネス価値を生み出すプロセスとなります。

7)プロセス変革や全社最適、継続的改善などの視点ありきでのソリューション

「各人、各部門の個別作業の効率化」や、局所的な効率化、システムのサイロ化、重複という無駄や弊害を生みださず、です。

8)「システム導入」ではなく「ビジネスの変革」

市場ニーズにより製品は多様化し、多品種少量の生産が主流になってくると、そこに対応した業務や対応するシステム等も大きく変化、見直しをしていく必要があります。

しかし、現行業務AsIsのプロセスが整理できても、将来のあるべき姿ToBeまでを最初からすべて完全な形で定義することは非常に困難です。

こうした状況下では、まず業務要件やシステム要件がどこまで確定でき、課題検討を進めなければならないのかを仕分け、その要件の確定度合いによって進め方を柔軟に組み替えていかねばなりません。

業務要件やシステム要件を確定しにくい場合は、実際に業務適用したイメージを目に見えるもの、動くものとしてプロトタイピングし、お客様のフィードバックを都度反映しながら要件を確立していくプロセスが肝要となります。

また、業務要件やシステム要件が確定しても、機能要件の確定深度が浅いと、実際に開発プロセスに移行しても要件の見直しや再定義、差異調整が発生することは明らかです。そのため、開発の前段で、アジャイル開発などの手法を交えて、小さな単位で機能開発を進め、都度お客様の意見をうかがい実業務での適用度合を確認しながら開発プロセスを洗練していくことが必要と考えます。

通例のウオーターフォール開発とアジャイル開発とのハイブリッドにより、プロジェクト推進では「ビジネス課題」「やりたいこと」に集中しましょう。

要件定義とプロトタイピング・・・業務側のお客様と一緒に、新たな概念やアイデアの実現可能性や有効性を検証するため、簡単で不完全な実現化を行う=要件の精錬。ウォーターフォールとアジャイルのハイブリッド・・・IS側のお客様と一緒に、機能要件が厳密に確定していればWF開発、柔らかければ 実用最小限の製品(MVP)の短期サイクル構築、フィードバックを繰り返す=機能精錬。それぞれが、OODAループ(短いサイクルでPDCA)を回し磨き込んでいく所作!
(図5)要件精錬と機能精錬の2段階推進
※クリックすると拡大します

9)プロジェクト推進における意思決定・判断のスピード感

部門横断の問題を解決する組織横断チームを構成、関係部門のステークホルダーをアサイン、全体利益最大化する解決策を検討しましょう。

10)課題解決・プロジェクト推進を実行に移すためのワーキンググループ(WG)

各部門のステークホルダーを参画させ、迅速な意思決定を可能とする検討体制を構築し、領域毎に意思決定の権限を有すべきです。

(図6)課題解決・プロジェクト推進を実行に移すためのワーキンググループ
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番外1)アライアンス連携

昨今では、同業種だけでなく、例えばEV車に見られるように他業種のメーカーが参画した異業種間でのアライアンスも主流となってきています。

BOMは、ものづくりのあらゆる工程に関わるシステムであるため、再構築の取り組みは、製品開発業務に関する課題のみならず、アライアンス間の言語や文化、業務の差によって生じる障害や問題、課題といったものも、全社をあげて解決していくことにもつながります。

番外2)ソフト管理

エンジニアリングの観点からは、標準化や再利用性を高めることが期待され、モジュール化設計などによるQCDの向上が期待されています。近い将来、管理の仕方は大きく変わっていくことが予想されますので、ハードに比べて何十倍もの変更管理に耐えうる仕掛けと現場との兼ね合い、落としどころを併せて検討して行く必要があります。

以上、業務観点、システム観点での重点施策のポイントをご説明しました。

仕様管理やグローバル化など、BOMの再構築においての押さえておくべきポイントは、上記以外にもいくつかあると考えています。それらの詳細については次の機会でご説明したいと思います。

おわりに

弊社では、最新の市場状況も踏まえ、お客様毎の要件を満足するBOM構築およびBOM周辺システムの構築に向けて、コンサル、開発、運用保守のサービスをご提供しています。プロジェクト推進では、ウオーターフォール型の開発だけでなく、アジャイル型の開発にも取り組んでいます。

お客様の組織内のつながるものづくりの実現から、企業間や社会に向けたつながるものづくりの実現に向けたご支援も行います。まずはご相談からお気軽にご用命いただけると幸いです。

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(第二ソリューション開発部 部長SE 首藤)

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